- 撮影不適状況下での撮影方法
- 2014.08.11 Monday
- category: 写真テクニック初級編
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コメント欄で質問があったので、これまでを振り返り整理してみると共に、最近検討していた新たな方法について私の考えを書いてみようと思います。
私の場合、基本的に以下の方針で撮影しています。
1. もっと良い場所がないか他をあたる
大方針として、パッと見て、撮影に向くかどうか判断してみて、並の撮影対象の場合は、さっさと他があるさと諦めることが多いです。このあたり、撮影回数が増えてくるにしたがって、最良条件のイメージがかなりストックされてしまい、経験が邪魔をして新たな開拓ができていない可能性があるのですが、実際問題として、それを2以降で解決できるケースは少ないのも事実です。特に短いバカンスで撮影するようなスタイルでは時間は最も貴重なリソースですからね、、、。この本(↓)にも書いてあります、「犬の道」を歩むな、と。
2. 邪魔なものを排除できる場所を探す
カメラの基本の「キ」ですが、自分が動くことで被写体を最も美しく(人によっては醜く?)写せるアングルを探します。空中の水分によるコントラスト比や被写体と背景との大小比が関係するため、写真の基本は寄りだと「私」は信じて疑いません(それが「私」の風景写真なわけですし)。ただ、そんな広角派の私でも近くから写せない場合は、逆に離れることでどうにかならないか検討します。例えば滝の場合、近くからだと水しぶきがかかったり、寄れなかったりすることもあるわけですが、そういう場所に限って中途半端に離れた場所からは写せないということもあります。そんな時は地図を広げて、どこかここを写せる高台がないか遠くの場所を探します。当然望遠にはなりますが、仕方ありませんね、、、。
3. 邪魔なものを排除できないか検討する
自分が動いてもどうにもならない場所というのが、実は結構あります。草とか木とか人とか。多いのは、せっかく作った良い場所にある展望台なのに、目前に生い茂る木々のせいで視界不良。もう展望台としての機能を失っています。これは日本の箱物行政の典型で嘆かわしいことです。あるいは、山中湖畔の逆さ富士狙いなんかも人だかりの後ろから写すこともありますね。そんな時は大型三脚の出番です。脚立も忘れずに。私が使っているGITZOの5型は最大2.6m。脚立があれば、木だろうが立ちはだかる人だろうが、後ろから撮れます。だから、(重いけれど)大型三脚を持って歩いているんです。脚立がない時でも、今の背面液晶付きのカメラならばファインダーを覗く必要がありませんし、最近のカメラは無線で確認できるものも出ていますから、何だったら、完全に背面を見る必要はなくなってきています。ただし、そんな便利なカメラでも、カメラ自体の水平を保つのが自動ではできないのが玉にキズ。下の方で水平を確認したら、後は一番下の脚を出し入れして調整するしかないですね。水平?水準器を三脚に使ってください。
でもですね、実はGITZOよりもっと高い所からの撮影だって可能なんですよ。ポールの先にカメラをくくりつけて。そういう商品も出ています。
後は、草だったら、誰かに持っていてもらうとか、一人だったら近くの草と紐で束ねておくとかですね。自分が所有する場所でない限り、邪魔だからといって刈ってはダメですね。自然は自然のままに。それをやるといつかバレて大きく信用を失います。登山道のロープの内側から撮るのと同じです。どこから撮ったかなんて、そこで苦労した人にはすぐに分かります。フォトコンには絶対にそういうルール違反をした写真を応募するべきではありません。また、そういう苦労をするからこそ撮影に工夫が生まれて新たな自分を発見することができるんです。困難を成長のチャンスぐらいに考えるのが良いです。
4. 別の条件下での撮影を検討する
一日には、未明、夜明け、朝焼け、朝、午前、昼、午後、夕方、夕焼け、夕暮れ、夜という様々な時間があり、それぞれに撮影に与える影響が異なります。
トップライトで映える被写体、例えば青い水面と青い空のようなものは、被写体に対してカメラの向きが順光になる時間帯に写します。例えば、西向きの海岸をトップライトで美しく撮りたいのでしたら、午前が良いでしょう。
トップライトでは照り返しが強くて白飛びを避けられないコントラストの高い被写体がありますね。例えば滝や白い雲です。そういう被写体に対しては光が弱い状況で写します。滝だったら薄曇り、雨、早朝、夕方の光が撮影に向きます。ただし台風が来ているような状況では水際は危険なので近寄ってはいけませんよ。
長時間撮影したい被写体、例えば、波とかをポイントにしたい場合には、未明か夕暮れ、夜などが良いでしょう。月が出ていると最高ですね。状況によっては月がない方が良いこともありますけれどね。どうしても真昼にそんなものを撮りたい場合には、ND8あたりのフィルターを二重か三重かにして使うと良いでしょう。私も三重にして撮影してみたことがありますが、、、正直、NDフィルターよりも時間を選んだ方が面白い写真にはなりやすいです。
ちなみに露光量を計算できない人のために、あえて書くと、光量減少の関係は以下になります。
ND2 - シャッタースピード1/2(以下、シャッタースピードという言葉を省略します)
ND4 - 1/4
ND8 - 1/8
ND8×2枚 - 1/8 x 1/8 = 1/64
ND8×3枚 - 1/8 x 1/8 x 1/8 = 1/512
つまり、ND8を3枚使ったら、シャッタースピードは1/512になります。例えば、フィルターなしの状況下で1/500のシャッタースピードだったとしたら、ND8を3枚使うと、ほぼ1秒のスローシャッターにできるわけですね。一回やってみたら良いと思いますよ。それで雲を流して撮るとかが可能になります。ただし雲を流すには1秒でも全然足りないので、、、絞るだけ絞ってください。F22かF32か。それでも足りなければ、もっと足します?(笑)
ちなみに、この撮影方法が流行ると仕事を失う写真家が一人いる気がしますが、、、個人的なノウハウが他にないなら、まぁ仕方ないかな。昔は写真を「まともに」撮れるだけで写真家と名乗れた時代もあったのがデジタル世代で駆逐された歴史が繰り返されるだけのことですし。この手の話は、アオリ撮影、HDR、大判撮影にも共通で、技術革新で駆逐されやすい分野ですね。
話は続いていて、さて、ここで光の量とは別のこととして、色温度を考える必要もあります。WB(ホワイトバランス)をオートにして撮影している人は私のブログを読んでいないと信じていますが(笑)、作品作りにおいて、当然のこととして、自分の写真を青くしたいのか、赤くしたいのかということを撮影前に考える必要があります。青い写真、つまり、岩肌の冷徹な感じや冷たい水を表現したいのであれば、夜か早朝、夕暮れで撮ります。赤い写真、つまり、ロマンスやノスタルジーを表現したいのであれば、朝焼けや夕焼けで撮ります。ニュートラルな写真、つまり元気や爽やかな感じを表現したいのであれば、トップライトにあたる午前から午後に撮ります。過去に実験して分かっているのですが、すんごくつまらない雑草でも青や赤に色温度を変化させて撮影することで、表情を引き出せることがあるのです。カメラの設定でも色温度を変えられますが、自然が引き出す表情ほどには「自然に」ならないので、普通の人はやめた方がいいかな。
順光・逆光・半逆光という光線状態の違いもあります。太陽と月のそれぞれに言えるのですが、順光の場合は被写体そのものの色と形の両方を写したい場合。逆光の場合は被写体はシルエットだけにして背景の色や光を写したい場合。半逆光は被写体を選びますが、花などを透けて撮影したい場合。順光で汚く見えるものでも、逆光にすると案外良かったりします。そうした自分で美しく見せる工夫を見つけることこそ、写真の楽しみであり、「やった!」と思える瞬間でもあります。誰でもキレイに撮れるものをキレイに撮っても、まぁ、普通です。特にフォトコンを狙っている人にはね。私は最近フォトコンをやめて記録に徹しているので(なにせ再現性のない風景が多いので壊れる前に一つでも多く撮っておきたい)気にしていませんが、今でもそういう工夫を見つけた時はもちろん嬉しいに決まっています!それと逆光で重要なこととして、色を持つ大抵の「汚いもの」を消す効果もありますよ。私も渓流撮影ではそこを計算して「実は構図の中には汚いもの」を入れてしまうことがあります。暗い場所にあるものは「目立たなければ」誰も気にとめないのです。これは私が多用している考え方です。黒つぶれバンザイ!ですね。
それと、天候の差、つまり、快晴、(雲がある)晴れ、曇り、雨、霧、雪などがあります。コントラストが欲しい被写体の場合には快晴か晴れの日が良いです。逆にコントラストを欲しくない時、つまり、花や渓流撮影の時は薄曇りから曇り、場合によっては雨や霧を期待します。雪の日は日中でも色温度が青に傾くので、日中に冷たい写真を撮りたければ雨や雪の日は良いですね。写真には撮影者の気分が結構強く出るものなので、暑いイメージの写真を撮りたければ自分が暑いと思う(思うことが大事)ことが必要ですし、寒いイメージの写真を撮りたければ自分が寒いと思うことが必要です。
最後に風の強弱、つまり、無風、微風、強風があります。木や草を入れることの多い私の撮影では、基本的には無風か微風を願っていますが、強風の時は諦めて流して撮ります。でなければ、強風の時でも一瞬来る微風をひたすら待つか。結構待っていることは多いですね。諦めて流すことも多いです。そして、今回の記事ではこれが大事なことですが、邪魔な木や草が風でたわむと一瞬視界が開けます。そこで撮ります。強風でも風で振り切った瞬間は止まって見えるのがポイントです。
5. フィルターで工夫する
風景写真の人は、基本的にPLフィルターを外さないと思うのですが、もう一つの工夫として、ソフトフィルターが使えます。ソフトフィルターは、儚さとか、ノスタルジーとか、そういう感じを引き出す場合が良いです。被写体を選ぶのですが、通常の撮影でどうにもならないようなら、チャレンジする価値はあるでしょう。私から一つ言えることは、ソフトフィルター以外にも自作フィルターという道もあるよ、ということでしょうか。私も過去にはガーゼフィルターとかビニールフィルターとか色々作って試してみました。今でも息フィルターは使うことがあります。でも一番のお気に入りだったのはガーゼかなー。
6. 陸上からの撮影を諦める
人間は肺呼吸の生き物なので陸上にいるのが自然ですし、当然陸上から撮影するのが理に適っているとも思うのですが、アングルを変える以上のことを考えたら、案外面白いと思いますよ。例えば、ダイビングと空撮。
私がダイビングを始めた理由の一つは、沖縄の海を一週間、ひたすら陸上から撮っていて、いっそ、海の中に入っちゃったら面白いんじゃないかと思ったことでした。そもそもは、写真を始めるきっかけになったオーストラリアでの啓示でしたが。海の中を撮るのも面白いと思うのですが、半分水中、半分陸上を写すこともできます。ただ、この撮影をする時は、ガラス製のドームでないと水滴がガラスに付いたままになりやすいので、、、少しお金がかかるのと、重くなることが難点でしょうか。
後は空撮ですね。ハワイ島でやったことがあります。難点は金額でしょうか。5人の乗客がいたヘリでも2時間で一人5万円取られました。もちろん一人乗りのチャーターだともっとべらぼうに高いです。そういえば、最近グッドニュースがありました。飛行機の離発着の際に電波を発しない電子機器の電源を付けていても良いことになる(まだですよ!)そうですよ。これはシート争いがさらに熾烈になりますね!(笑)
ただですね、最近、私はもっと現実的な空撮を考えているところです。ラジコンヘリというのが昔からあるわけですが、カメラの小型化に伴って、カメラ搭載のラジコンヘリの価格がかなり現実的な設定になってきています。低画素で良ければ数千円。でも、我々の要求を満たす画質だとまだちょっと高いんですよね−。ヘリとカメラで合計20万くらい、しかも飛べるのは10分ちょっと、どうしようかなー、結婚してなければ、迷ってないでポチッとしているところだったのですが。見つけるのが1年遅かった(汗)
7. 全てを受け入れる
避けられないものは、いっそ、全て受け入れてしまって、それを撮影に生かせないかをひたすら考えます。私が広角に目覚めていった理由は、望遠で出せない現実感をそこに見いだしたためですが、広角撮影の技法として避けられないのが、遠近感の強調とそれを実現するための前景の存在です。前景というのはただそこに写っていれば良いというものではなくて、いかに前景だけでも美しく見せるか、それを徹底的に考える必要があるのです。
、、、さて、色々書きましたが、上記したような光線状態や時間帯、撮影条件など、様々な工夫により、撮影不適を撮影可に変えることこそ写真家の醍醐味ではないでしょうか。でも、まー、本当にどうにもならないものは、やめちゃってもいいんじゃないでしょうか?私達はアマチュアなので。他にもきっと写すべきものはありますよ。逆にアマチュアだからこそリソース制約なしに徹底的に工夫しても良いとも思いますけれどね。それはプロには無理なので。
と、こんな長文を書いていたらサイト管理ができないじゃないか!(汗)
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- 結婚式などのスナップ撮影の注意点
- 2013.10.16 Wednesday
- category: 写真テクニック初級編
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今、自分の結婚式の写真を補正中です。
撮影はスタジオカメラマンにお願いしたのですが、、、。
これがとんでもなく下手だったので、その補正にてんやわんやです(汗
というわけで、この補正中に思ったスナップ撮影の注意点を挙げてみたいと思います。
・水平を取る
スナップ撮影でも風景写真と同様、水平は重要な要素です。意図してずらすことで勢いをつけることができますが、基本は水平です。これがずれると、下手なんだなとすぐに分かります。
水平を取るためには、画面の中にある垂直、水平の線を探して、それが垂直もしくは水平になるように心がけると良いでしょう。例えば建物や窓の輪郭、柱などを基準にするとずっと水平を取りやすくなります。
・ピントを被写体に合わせる
ピント位置をオートで撮る人に多いのですが、肝心の被写体にピントが合わずに、前景や背景にピントが来ることがあります。常に被写体にピントが来ているか、ピントの合う範囲を確認しましょう。また、特定の位置でピントを合わせたとしても、その後でシャッターをきるまでにタイムラグがあると、自分か被写体のどちらかが動いてピントがずれます。コンティヌアス・モードを使ったり、タイムラグを作らない、自分が動かない工夫をするなど、ピントがずれる要素を排除しましょう。
・ホワイトバランスをオートに設定する
室内撮影では、室内の照明の色温度にかなりの影響を受けます。特に太陽モードなどを多用する風景写真家の皆さんはホワイトバランスをオートにしておくだけで、かなりの範囲の失敗を防げるのではないかと思います。RAWで残していればこの点は大丈夫ですけれどね。
・不要な前景を入れない
ろうそくとか、葉っぱとか、他の人の手とか、、、。それ、計算で入れれば臨場感を増す工夫につながるのですが、多くの場合、ただ入っただけの要素です。そうしたものが入っていないことを画面の四隅に気を配ってから撮影するクセをつけましょう。そうした「入っちゃった」前景は、すっごく邪魔で、被写体の持つパワーが大きく削がれます。
・不要な背景を入れない
被写体以外の人を画面に入れないように気をつけましょう。特に被写体にかぶって写る人物やモノが被写体の印象を弱める可能性については、常に意識してください。どうしても入れざるをえない状況では、なるべく目立たないように入れるようにアングルやタイミングを工夫しましょう。被写界深度を調整することで、背景だけをボカして、目立たなくする方法もあります。
・被写体の向きを意識する
被写体、特に人物の場合、その人物の前方をやや広めに開けるのが基本となります。正面を向いている場合には左右対称になるように、右を向いている場合には右をやや開け気味に、左を向いている場合には左をやや開け気味に。そうしないと余裕のない、不安定な写真になります。頭の上も少しだけ余裕を持たせておくと、画面全体が窮屈にならずに済みます。
・十分なシャッター速度を確保する
被写体は動きます。動いている最中の被写体を撮る時には、十分なシャッター速度を確保しておかないと、被写体ブレを起こしてしまいます。例えばお辞儀をしている最中とか、歩いている時とか。50mmくらいまでのレンズであれば、おおよそ1/160s以上は確保しておきたいところ。望遠だったらもっと必要になることもあります。シャッター優先はむろんのこと、暗い室内撮りの場合にはストロボを検討します。ストロボ光は直進性が強い光のため影ができやすいですが、変な技巧に走って結局シャッター速度がかせげていないくらいならば、もう思い切って直接ストロボを被写体に向けてちゃんとしたシャッター速度で撮る方が、スナップ写真としては上等だと私は思います。
・被写体の動きに合わせる
被写体が動いている場合でも、よくタイミングをはかれば止まっている瞬間、遅くなる瞬間というのはあるものです。シャッター速度が稼げない状況では、そうしたタイミングで撮ることで被写体ブレを防ぎやすくなります。それには動きの先を読んで行動することです。プログラムがある場合には、次はこうするハズという予測をしながらシャッターチャンスを待ちましょう。
・望遠では絞りを浅くしない
同じ絞りでも、広角ほど被写界深度は深くなり、望遠ほど被写界深度は浅くなります。したがって、24mmや35mmではF5.6くらいでも問題にはならないとしても100mmだったらF8、200mmだったらF11と、絞りを絞っていく必要があることを覚えておいてください。なんのことを言っているのかというと、、、二人を斜めから撮る時のことです。並んでいる二人を斜め前から撮ると、片方はレンズから近くに、片方は遠くにいることになります。したがって、どちらかにピントを合わせて撮る場合、絞りが足りないと、もう片方はぼやけてしまうのです。これを防ぐためには絞るしかありません。絞ると暗くなります。ということで、室内で望遠を使う結婚式の撮影では、ストロボ必須です。
・斜めから撮らない
絞りを十分に確保できない場合は、斜め前方から撮らずに、ちゃんと正面から撮りましょう。そうしないとボケます。またちゃんと全体にピンが来る場合でも、斜めから正面用の写真を撮るとレンズに近い人は大きく写り、遠くの人は小さく写ります。さらに梁などの水平物が斜めに写ることになり、画面に不安定感が出てしまいます。奥行きを表現する必要のない場合には、できるだけ斜めから写さないことです。特に何人も画面に入る集合写真に近いものでは。
・できるだけ広角を使わない
広角であるほど近くのものは太く長く、しかも歪んで写ります。人物がその近くのものである場合、本来の形状を保持することができなくなります。したがって、どうしても広角である必然性がない場合には、できるだけ望遠気味で歪みを抑えた方がキレイに撮れるのです。そして、望遠にすればするほど暗くなりますから、、、ストロボを使いましょう。自信がなければ変な技巧を使わずにストレートにストロボを向けて撮りましょう。それだけで記念写真としては十分な写真を撮ることができます。
以上、こうしたことを守るだけで、驚くほどスナップ撮影を上達させることができるのではないかと思います。結婚式のスナップ撮影は、作品撮りではありません。間違った技巧を使うくらいならば、完全なシロウトが携帯で撮った写真の方が目的を達していることも往々にしてあるのです。技巧に走りたくなるのは、少し上手くなった頃に陥りやすいワナです。目的を達するために必要なことは何かを忘れずに撮影にのぞみましょう!
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- 風景写真における水平の取り方
- 2012.09.12 Wednesday
- category: 写真テクニック初級編
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写真を撮るようになると誰でも気になりだすのが「水平」の扱い方。
ポートレートやスナップでは「躍動感」を表現するためにあえて水平を崩す(気にしない?)、ということもしますが、風景写真において「水平であること」は、僕にはほぼ絶対条件なのではないかとさえ思われます。
なぜなら「水平」であることはイコール「安定感」につながるからです。
僕が考える風景写真では、美とは別の「何か」がなければいけない、と思うのですが、まず第一に「美しい」という条件を満たした上で語られなくては、誰も見てくれさえしないように思うのです。だから、僕は美しく表現するということに、かなりのこだわりを持っています(注:美にこだわるかどうかは写真家によります。「何か」だけを重視してキレイでないことをヨシとする人もいますし、美を「何か」の対比に使う人もいます。その辺は写真家の世界観、個性ですね)。
美とは何か、というのはすごく哲学的で難しく、その全貌は未だ僕には見えていませんが。
少なくとも、何らかの「律」に従った時に美しく「見える」、というのは分かっています。有名な黄金比というのはものすごく厳密に決まった比率によって定義されます。そこまでではなくても、日の丸構図や三分割法というのは、そうした律の原則にうまくあてはめるためにも重要な型なのです、、、正確には「律の存在」を学習するための型であってこれが美の絶対条件ではないとは思いますが。
律を守ることにより構図上の「安定感」が出せ、結果として、自然の「荘厳さ」や「完全さ」を表現するのに結びつくのではないかと思います。
そして、荘厳さや完全さというのは、静けさを前提といるように思われます。静かであるためには、どの方向にも動きがあってはいけません(視線誘導とは別の意味でね)。ところが水平が崩れると、重力に従った「向き」が発生してしまいます。重力があればモノはその重力に引かれて動いていってしまうのです。これでは表現として矛盾してしまいます。そこで、まずは「水平でなければならない」ということなのだろうと考えています。
逆に躍動感とは本質的には「動いていること」つまり「不安定なこと」です。ということは、躍動感を出したい表現意図では、どこにも動かない「水平」という状態を作ってしまうと何もどこにも動かなくなるので躍動感がなく、「お通夜」のような静かな写真となってしまいます。被写体が動いているだけで躍動感を表現できるわけではないのです。サッカーグラウンドの全体風景を撮りたいのであれば水平に撮るべきですが、選手の動きを表現したければ少し崩すくらいの方が元気に動いている印象は強まるでしょうね。三脚を使っていてもF1などのレース写真では顕著に傾けることがありますが、その理由はこの躍動感にあるのだと思います。
ここまでをまとめると、自然風景を厳かに表現したければ「水平を保つ」ことが前提条件となり、ポートレートやスナップでは躍動感を出すために「水平を保たない」で写すことが必要だということです。
さて、では、風景写真で水平をとるとして、何を基準に水平を取ればいいのか、ということになりますね。
手っ取り早い方法としては、カメラ本体上部のホットシューに付ける水準器を使う方法があります。左がノーマルの2WAY水準器。右が電子式の水準器。僕は左のノーマルの2WAYを使っています。理由は電池切れがないからです。最近はカメラに内蔵されていることも多くなってきているので、それがあるならば、もちろん本体内蔵のでも構いません。ただ、機種によってはライブビューと水平が別画面で切り替えなくてはならないものがあります。そうした機種では撮影テンポが崩れるので、別途水準器を導入した方が撮影効率は良いでしょう。テンポが崩れるとメンドクサくなってきて色々手を抜きたくなってしまうので。手を抜くと見る人には案外分かるものです。
ところで、ノーマルの2WAYを使うとしても、結構、個体差による誤差があったりします。店頭で並べてみると分かります(僕はやってみたんです)。これは正直困ったものなのですが、、、。安いやつに飛びつくとさらに個体差がひどいことになります(店頭で比べてみれば分かります)。
それに、実は、、、カメラのホットシューも結構ずれていることがあって。というわけで、このホットシュー用の水準器は一つの目安にしかなりません。
最初は1Dsとか1Dとか50万、100万とする高級機を使っていたので、そういう細かい部分も結構大丈夫だったのですが、20万、30万程度で買える5D mark IIくらいのグレードになると、安く作るためなのか結構検査がテキトーなんです。ホットシューは元々ストロボを付けるためのパーツなので水平に作られていないという文句もどうかと思いますし。まぁ、とにかく個体差が大きいわけです。同じ機種のカメラを2台以上同時に持ち歩く僕の撮影スタイルでは、広角レンズを付けた5D mark IIで水平を作って、画角がわずかに合わなくて望遠レンズを付けた5D mark IIに取り替えるということをしますが、、、水平じゃなくなるんですね。困ったものです。これを回避するためだけでも水準器が本体内蔵されているカメラに変えたいと思わなくもありません。
とはいえ、そういうグチをいくら言っても仕方ないので、実際に、僕はどうしているのかというと、「目視」で水平線を決めています(笑)。
え?じゃあ水準器いらないじゃん!と言われるかもしれません。が、それでも必要なんですよ。素早く構図を作るためには水準器を基準として「粗く」構図を作ります。
実際の撮影作業としては、その後に、木や枝1本、小石1つの出し入れをするような細かなフレーミング調整があるのですが、その最中に、やっぱりこのフレーミングじゃダメだ、もう少し別の構図にしよう、などと仕切り直すこともあります。そうしたやり直しがある時に毎回目視で水平線を出し直すと時間がかかってしまいメンドクサくなってくるわけです。そうした理由から、もうコレで撮るか!という時にわずかに補正するのが目視による確認なんです。
目視による水平を作る時の基準は、まずは水平線や地平線を基準にすることです。あれば、ですが。ない時には、まっすぐに立っている木とか建物を基準に、それがレンズ中央付近で垂直になるようにします。レンズ端の方は歪んでいるのでがんばって垂直にしても意味ないことが多いです。
また、水準器または目視により「水平にしたよ」という状態を作っても「水平に見えない」風景というのがあります。湖や海岸線を撮る時にそうした状況になるのですが、向こう岸の水際が「わずかに」斜めにカーブしている時があります。こうした風景で水平を作ってしまうと、人間の目には水平に見えずに、傾いているように錯覚します。ここを「いや、ちゃんと水平にしてるんだから、そう見てよ!」と水平絶対至上主義を貫いてしまうのも一つの方法ですが、僕はこうした風景では「向こう岸」が水平に見えるようにわずかに傾けてしまいます。それで水平に見えるなら、その方がいいよね、という考え方です。ただし、注意があって、本当に水平線や地平線が見えている場合には、それを無視してこうした撮り方をすると、逆に不安定になります。あくまでそうした基準がなくて、水準器を頼りに撮らざるをえない時、という条件がつきます。
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- 花火の撮影方法
- 2012.08.23 Thursday
- category: 写真テクニック初級編
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夏は(なぜか)全国的に花火大会が開かれていて、8月終盤のこの時期は、いよいよ残るイベントもあと少し!というところでしょうか。残り少ない花火大会は有効に活用したいですね。真夏は花が少なく、被写体が減る時期でもありますしね。
花火撮影は、基本的に2つのことを理解すれば上手く作品を創れるようになります。
1.バルブ撮影
2.コンポジット
まず、バルブ撮影について説明します。
バルブ撮影とは、Av(絞り優先)とかTv(シャッター優先)とかM(マニュアル)とかあるドライブモードの中でBulb(もしくは「B」)となっているモードです。これは、「シャッターボタンを押している長さだけ、ずっと露出しますよ」というモード。つまり、あなたが必要と思った長さだけ露出し続けることができるので、1時間でも10時間でも好きなだけ(電池が持つ間は)露出できるということなのです。普通はリモコンを繋いで、リモコンに露出時間をセットして(例えば普通のデジカメの上限である30秒を超えた1分とか4分とか)、その間、露出し続けます。
ところが、花火が普通の露出方法ではダメなのは、「花火と花火の間に間がある」ことによります。その間、何も写りませんよね?そうすると無駄に明るい画像ができてしまうのです。
そこで、必要なのが「黒い下敷き」。
できれば、つや消しの布や、つや消しのビニールを表面に貼って自作しておきます。
で、その「黒い下敷き」で何をするかと言えば、、、。
自分で露出時間を口で数えながら開けるのです。
まだ分かっていない人のために、ちゃんと説明します。
・カメラはバルブに設定
・リモコンはシャッター全押しで「ロック(押している状態が継続)」
・黒い下敷きをレンズ前に置いて、何も写らないようにする
これで準備完了。
そして、花火が打ち上がる兆候があったら(上に光があがったり、水面に光が見えたりしたら)、下敷きをレンズ前からどかして露光開始!同時に合計何秒露光したかを自分でカウント!
そして、もういいや、という所で、また下敷きをレンズ前にかぶせて何も写さないようにする。
これを、必要な明るさが得られるまで続けるのです。
一応参考として、どのくらい露光すればいいかを記しておきます。
真っ暗な場所(都会ではない所という意味)では、F5.6、ISO100で30秒から40秒で十分な明るさを得られます。
つまり、一回10秒くらいの花火が上がるとすれば、この動作を3から4回繰り返したら、
・リモコンのボタンを「アンロック」して露光を完全に終了
します。
次にコンポジットの説明をしておくと。
Photoshopのような現像&レタッチツールを使うと、「レイヤー」の重ね方に「比較(明)」というオプションがあります。上述の方法で何十枚もの「原画」を作ったら、今度はその原画を全てレイヤーとして重ね合わせます。そして、その全てのレイヤーに「比較(明)」のオプションを適用します。
これで、各写真の一番明るいポイントが残っていくので、「多重露光」と同じような効果を得ることができます。
あとは、どこから写したら、こうしたコンポジットが生きるだろうかと、撮影場所を地図とにらめっこしながら決めるだけ!(それが一番楽しく、そして面倒なことかもしれませんが、、、)
こうして創られたのが、「涼華」という花火作品なのです。
なお、花火大会の情報はWalkerplusなどのWeb情報やじゃらんなどの花火特集が参考になります。僕も数年前に買った雑誌を元に品定めをしていたりします。日付は多少変わるのですが後は同じなので一回買うとずっと使えるという、、、(汗)
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- PLフィルターの正しい使い方
- 2012.07.13 Friday
- category: 写真テクニック初級編
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風景写真を撮る上で必須のフィルターの一番はなんと言ってもPLフィルターでしょう。
それゆえに、せっかく出会った素晴らしい風景を生かすも殺すもPLフィルターの使い方次第とも言えます。
PLフィルターとは何か?ということを一言で表現するならば「反射光の量を思い通りにコントロールするフィルター」です。決して「反射光を取り除くフィルター」ではありません。これが初心者に誤解されやすい点です。
ちなみに、ここでPLフィルターと言う場合は、AF対応のCPL(円偏光)フィルターのことを指します。PLフィルターは、二層構造になっていて、前面部分をくるくる回すとその回した角度によって、0%から100%まで反射光を取り除く量が変化するように設計されています。ちなみに効果100%だとしても、実際にその光をどのくらい取れるかは反射角によります。基本的には順光撮影時の光を取るものだと考えてください。
この取り除く量が多いほど、被写体の表面に映り込んでいる外部の光量が減るため、被写体本来の色彩が現れることになります。多くの風景写真家がPLフィルターを好んで使う理由は、赤い花、緑の葉、青い海や空など、被写体が持つ本来の色彩を写真に記録して風景を色鮮やかに仕上げられるためです。
では、いつでも反射光を100%取り除けば「良い表現」ができるのかと言うと答えは「ノー」です。
そのノーの条件にはいくつかの決まったパターンがありますので順に覚えておきましょう。
1つめは、川の写真を撮る時。
川が最も面倒な使い方になるので、、、面倒なものは最初に片付けてしまいましょう。川を写す場合に、反射するものは3つあります。それは、葉、水面、岩です。
葉は鮮やかにしたいことが多いので光を除去しても大抵は問題ありません。ですので、ここはさらっと流しておきます。
次の水面は、色を出したいだけならば完全に除去しても良いですが、流れが穏やかな場合、完全に除去すると白っぽい部分がなくなるために「流れている」ことが分からなくなります。そんな時は0%から100%の間のどこが「流れている」ことが表現できて、しかも色も出せているかを、フィルターをくるくる回しながら探すことになります。日中の撮影で直射光になってしまうと滝壺などは白く飛んでしまうので、この反射率との兼ね合いも結構面倒です。その面倒をひとつ減らすために、僕はできるだけ太陽光が直接差さない朝か夕方に写すことが多いです。
最後の岩も少し面倒です。完全に除去すると真っ黒になってしまい「色気」がなくなります。これは僕の美的感覚なので少し伝えにくいのですが、「僕は」岩という被写体は少し濡れているように表現されている方が色気があって美しいと感じます。ですので、岩の反射光を完全除去するとこの濡れている感じがなくなってしまい、色気が感じられなくなります。そこで岩も0%から100%の間で適切に除去する量を探しますが、多くの場合は、反射光の80から90%を除去すると「いい感じ」になるように思います。この辺は個人の美的感覚が関わってくるので誰でもそうすべきかは正直分かりません。
実際には、これらの葉の色彩、水の流れ、岩の色気の3つのバランスを取れるように撮影します。
これらの要素のそれぞれに気を遣っているかどうかで初心者かどうかが(構図以外のことでも)写真を見て分かるのです。
2つめは、水面やガラスへの映り込みを撮る時。
水面やガラスに投影された被写体を撮る場合には、PLフィルターを強めに使うと反射光が除去されてしまい、被写体の映り込みも消えてしまいます。こういう時は、PLフィルターを使わないか、使っても弱く効果をかける必要があります。
逆に、ガラスに写った自分の姿や室内の光を除去したい時にはPLフィルターを強めにかけると、だいぶ弱まります。
3つめは、逆光で撮る時。
逆光では、シルエットだったり光の反射そのものを撮ったりすることになるため、PLフィルターの効果を弱め、もしくは外した方が明暗で表現されたコントラストの高い美しい写真になることが多いです。逆光ではPLフィルターの効果を感じにくい時も多いですしね。ただ、夕景などで弱い光を撮る時には、人工物だけやたらと光ってしまうなどの場合もあります。そんな時は人工物の反射部分をPLフィルターで除去するのもありですね。
4つめは、夜景を撮る時。
夜景は、基本的に光そのものを撮影するので、反射光を除去すると華やかさの足りない「ショボイ」写真になります。PLフィルターをつけていると、たとえ除去0%でも、何もつけていない状態より1〜2段も暗くなるので、撮影時間短縮のためにも、夜景撮影では外しておいた方が良いでしょう。
5つめは、虹を撮る時。
あまり遭遇する機会はないと思うのですが、運良く虹に出会えた時は、PLフィルターの角度を慎重に選ばないと虹の光が弱まってキレイに写りません。時間もなく迷ったら、PLフィルターを外すのも選択肢の一つです。
6つめは、霧や雨の中で撮る時。
霧や雨での撮影は、もともと色彩が乏しい世界なのと、そもそも強い光がないため除去すべき反射光が存在しないことが多いです。こんな時はPLフィルターの効果を弱めておくか、最初から外して、代わりに撥水加工のUVフィルターをつけておくようにします。
ちなみに、PLフィルターには寿命があり、だいたい2〜3年と言われています。外でどれだけ写すか次第ですが、だんだんPLの効果がなくなってきます。なんか変だなと思ったら、買い換えましょうね。で、どうせ買い換えるなら、以前の記事にも書きましたが、次は撥水加工のものが便利ですよ(笑)
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