美しいだけの風景を超えた何かとはー写真家と写真作家の違い | 風景写真家 落合勝博 ゆるブログ
<< 風景写真における水平の取り方 | main | アドビ税を払ったよ、と。 >>
美しいだけの風景を超えた何かとはー写真家と写真作家の違い
category: 写真のコラム
0
    「風景写真における水平の取り方」という記事の中で、僕は、風景写真とは美しいということの他に『何か』がなければいけない、ということを書きました。

    多くの人にとって、風景とは美しいものであって、また、そうした美しさが風景写真へと駆り立てるのだと思います。それは、風景写真を撮るモチベーションとしてすごくまっとうなことだと僕も思います。そして、美しい風景は、きちんと撮影技術を自分のものにし、適切な場所に適切なタイミングで訪れれば誰でも撮れるようになるものです。

    、、、記録としての風景写真はそれでいいんです。いいんだと思います。

    しかし、人々の記憶に残るような風景写真は、それだけで撮れるわけではありません。

    そうした写真は、感情のレベルで美しいと思う以上の何かを訴えかけてくるのです。その何か、というのが、美しさの他に必要なことで、写真家が鑑賞者に対して投げかけるメッセージなのです。

    実のところ、どんな人でも一生写真を続けていれば、一つや二つの傑作が撮れると言われています。そうした、「一発」は、たまたまその何かを備えていたのかもしれません。しかし、トップクラスのプロは継続的にそうした作品を創ることができます。一体、何が違うというのでしょうか?あるいは、どうして一冊にまとめられるほど、一貫した個性を発揮できるのでしょうか?

    僕は、以前にこの疑問に対してずっと考え続けてみました。これは、写真家と写真作家の違いでもあります。

    その結果、もっとも顕著に違うと思われるのは、美を越えた何かをきちんと意識して作品に込めているからではないかと思うようになりました。

    写真を撮る以上、誰でも被写体に対して、何らかの評価をしていると思います。これは美しいとか美しくないとか、そんなことを、ね。ただ、「何か」を写真に込めるためにはそのような刹那的な一貫性のない方法だけでは足りないのです。

    その頃の僕は、なぜ僕は風景写真を撮るのだろうか、誰に向けて撮るのだろうか、何を撮ればいいのだろうか、という自分の写真とは何か、オリジナリティとは何かを問わなければその先に行けない段階にきていました。

    この問いかけを通じて、写真あるいはアートにおけるオリジナリティとは、新しい手法か、新しい視点で創られるということである、という結論に至りました。しかし、写真の技法というのは、そう多くはなく変化もつけづらいものです(不可能という意味ではありません)。無理に変なことをしても、ただ変なだけに終わります。

    そこで、必然的にもうひとつの「新しい視点」とは何か、どうやったら持てるのか、ということを考えてみることになりました。

    新しい視点とは、今までにそうした解釈はされてこなかったね、というものです。

    人間はみんな違う個体で、それぞれに違う生い立ち、違う環境、違う喜び、違う悲しみを抱えて生きています。そうした個人的な性格や感情、モノの見方が個性なのです。その個性に基づいた解釈こそが、イコール、新しい視点なのだと思います。

    僕の場合は、例の体験で魂に刻み込まれた強烈なイメージがあります。ですから、そのイメージをメッセージとして込めればいいんだ、という結論に至ったのです。そうしたイメージを目の前の風景で表現できないか、と考えているのです。

    自分のモノの見方、つまり世界観をきちんと認識するには、長い時間をかけて自分の心に問いかけ続けなければなりません。自分は何者か、何が好きで嫌いか。何をしたいのか。そうして、自分の心が求めている欲求に素直に耳を傾け、自分という人間を知り尽くさなければいけないと思うのです。ところが、こうした問いかけは、多くの人にとってすごく難しいことです。心は、本当の気持ちを容易に覆い隠し、なかなか本当のことを教えてくれません。今のままがいいのだ、楽だと言い訳を考えては嘘ばかりついてきます。だから、そうした偽りの自分を越えて、本心をすっかり暴く努力が必要になります。

    そして、どうにかこうにか白状させた本心、自分自身を元に、自分に向く表現方法を選択するのです。撮影技術とはただの表現方法であって、表現方法だけがあっても作品を作ることはできないのです。いい道具があるだけなのです。

    このようにして、自分が表現すべき内容と、それを表現する技術を備えることで、写真作家になれるのだと思います。

    以前の記事についたコメントに対して「技術はマネできるけれど世界観はマネできない」ということを書きました。これは、今回書いた思想に基づいたことなのです。

    技術については、僕も教えられますし、それをマネすることもできます。そのためにこうして書いているのですから。過去には、僕が色々と手助けをしたことで、すごく上手くなった人もいます。しかし、そうした人達も、単に技術を学んだから上手くなったのではなくて、背景にある思想を磨いたからこそ上手くなっていったのです。

    こうしてあらためて説明しようと思ったのは、以前に、中途半端に僕の技術や思想の影響を受けてしまって弊害が出てしまった人がいたためです。

    あるグループ展でのことですが、フォトコンにも入選し始めた昇り調子のAさんと僕の作品は、離れた所に展示されていましたし、被写体も違うし色使いも違っていました。しかし、ある新聞社の写真関係のプロ(撮る側ではなくて見る側のです)は、僕を捕まえるなり、この作品のAさんはお弟子さんですか?と、見透したように僕に聞いてきました。僕自身もその作品の精神的な部分の類似性に事前に気づいていなかったのでビックリしたものです。あるレベル以上になると分かってしまうのです。こうしたことがあるので、誰かの劣化コピーではなく、自分自身の写真を撮りたいという人ならば、どこかで、自分のレールを自分で敷いて、思想的にも技術的にも独自の道を歩み始めなければならない時期が来るのです。その時(もう誰からも学べることはなくなったと思った時)が来たら、どうか勇気をもって自分の進むべき方向に進んでください。その道は、草がぼうぼうでとても歩きづらいので、正直、進むのがしんどい時もありますが、そうした苦労によって得られることがあるのです。

    撮れば上手くなるというのが不誠実なアドバイスだというのも、撮るだけではなくて、こうした思想的なことをいくつも自分で考えて解決していくことでしか乗り越えられない壁が僕にはあったために言っているのです。それは撮っていれば解決するという単純かつ簡単なものではありませんでした。

    カメラ技術は、かつてコダック社がそう意図し宣伝したように、シャッターを押すだけで写るような時代になりました。おかげで誰でもそこそこの写真を撮れるようになりました。以前は露出計算ができなければ撮ることさえできない非常に技術的でマニアックな世界でしたが、今はそうしたことはカメラがやってくれます。しかし、その先の世界を見るためには、シャッターを押すだけでは足りないのです。カメラは思想的なこと、本当に表現しなければならないことまでは自動で写してくれないのです。

    以前に、こうした問題を考えていて自分なりの答えを出した頃、自分の考えに対するサポート材料が欲しくて一生懸命書店を探していた時に見つけた本を紹介しておきます。写真の技術的な側面を教えてくれる教科書は多いのですが、作家の思想的な部分をきちんと説明した本は、この本以外には読んだことがありません。僕が「イチオシ」の良書です。実は、未読の本が切れたので、ちょうど読み返していたところです(汗)。ただし、読む人を選ぶ本でもあります。正直、技術的なこともおぼつかないうちに読んでためになるのか、この内容を消化できるのかは、僕には自信がありません。僕が今回書いた記事に納得してしまった人、悩んでいた答えを見つけたような気がする人、または、逆に何を言ってるんだ!そんな必要ないだろ、と批判ができる人だけが読むべき本だと思います。でないと、抽象的で意味不明な本、としか思えないでしょう。それだともったいないですよね、、、。


    JUGEMテーマ:写真
    comments(0), trackbacks(0), - -
    人気ブログランキング 風景・自然写真へ

    にほんブログ村 写真ブログ 風景写真へ
    にほんブログ村

    Comment.
    Add a comment.
    name:

    email:

    url:



    Trackback.
    url:
    New Entry.
    Category.
    Archives.
    Comment.

    pho10.comトップページに戻る
    ブログ内を検索
    プロフィール
    落合勝博(おちあいかつひろ)
     ー 横浜市在住のアマチュア風景写真家
    カレンダー
    SMTWTFS
       1234
    567891011
    12131415161718
    19202122232425
    262728293031 
    << May 2019 >>

    最新のブログに移動
    新着写真(壁紙)
    (解説付き)これだけあれば何でも写せる!
    お約束 (^_^;) amazonからの関連CM
    このブログの過去記事
    その他
    無料ブログ作成サービス JUGEM